バスガイド「私」の付知散発見【へぼ】

ご当地だから・・・

みなさん「へぼ」って知ってますか?
技術がつたなく未熟なこと・技量がつたないこと・優れた所がないこと・弱いこと・・などさまざまな表現に使われますね。今回は方言や言葉のことではなく、一風かわった高級食材を「へぼ」をご紹介。
今回のテーマは得手不得があるので写真は載せず、私の手描きで伝えていきますので不安な方もご安心を。

食べてたね~・・

手作りいなご捕獲道具

東濃地区(岐阜県の東寄りの地方)の山間部では、身近なタンパク質として・また生活の中に組み込まれた伝統として今なお受け継がれている「へぼ」。ひと言でいえば昆虫食。最近では日本だけでなく世界でも食糧危機の救世主として注目されています。そういえば最近のニュースでも岐阜県だけでなく各地に「昆虫食自販機登場!」って話題になりましたね。実は私も食べてましたよ・・いなご・・保育園の一番楽しいお出かけが、田んぼや野っ原でのイナゴとり。袋の口に短い竹筒を輪ゴムでとめた道具を持って飛び回るイナゴを捕獲しては入れ捕獲しては入れ。先生がから煎りして甘い醤油味に仕立ててくれました。今もスーパーなどで売ってますが勇気が出ず未試食です・・
ヘボに限っては主に岐阜県の他、愛知県三河地方、静岡県の一部、富山県の一部などでも食べられているようですよ。

その正体は・・

私・画(ヘボ)

果たして伝統さえ感じる「へぼ」の正体とは・・クロスズメバチ!!!
はい、スズメバチ。攻撃性が非常に強く、猛毒の針を持つ、あの危険生物スズメバチの仲間なのです!!
がっ、しかしっ!!ちょっと待ってください。クロスズメバチはみなさんが想像しているスズメバチとは異なり、とてもおとなしいスズメバチなのです。体長は女王蜂でも15mm程で攻撃性も毒性もさほど強くないとされ、自宅で飼育している家庭もあります。
ここからはクロスズメバチのことを「へぼ」とよびますね。当然ですがおとなしいとはいえ、スズメバチだし危険ではあるので十分注意が必要です。

余談ですが、方言にある「へぼい」=「弱い」は、本当にこのクロスズメバチ(ヘボ)が上記のような理由で他の生き物の餌食になってしまうほど弱いからなのだとか・・なんだか愛嬌さえ感じてしましますね。

正体が分かったところで・・

蜂の仲間が作るおいしいものといえば、ミツバチがお得意のハチミツですが、ヘボはどうでしょう??
スズメバチの巣は見たことありますか?屋根裏などに作られると大変やっかいな巨大な巣。でも体長も小さいヘボの巣はというと、山間の土の中にあるため人里で見ることはめったにありません。
そのため、6月から8月頃まで「ヘボとり」のため仲間とチームを組んで山を駆け回りヘボの巣を探すのです。
実はこの作業も私は経験してまして・・父は生イカをエサに仕掛け、寄せられたヘボに目印となる白い綿をつけ、それを追って巣を探し当てる。兄弟で楽しくかけたのも懐かしい思い出です。後は父が地中から巣を掘り出し、自宅の巣箱に移して楽しみながら育てていきます。エサには好物とされる鶏のささみやカエルの肉、砂糖水などを与え、秋が深まる11月にいよいよその時が・・

ベテランのみなさんのお楽しみでもある

一体、なにを食べるのか・・

答えは・・「巣の中身をいただく」です。はい、巣の中身・です。ハチの巣の中は蜂が住んでいるのではなく、女王蜂が次々と産んでいくたまご、幼虫、さなぎのための集合住宅みたいなもの。入っているものといえば・・
そうです、乳白色の幼虫、黒みがかって形は大人の幼体などです。
秋に十分育った頃を見計らって巣箱から出し、中身をピンセットなどで抜きます。もちろんやったことあります・・私がヘボを食べられないのはこの経験からだと思います。好きな人は生でチュルッといったりするとか・・
とにかく、そんな感じで鍋かフライパンにうつされ、醤油やショウガなどで甘く煮付けたり、炒ったりしたものが
高級食材はちの子・通称「ヘボ」なのです。

お味はというと・・すみません・・私、食べられません・・

聞いた話では、ねっとりしたクリーミーな卵焼きとか、香ばしいとかと聞きますが・・それこそ調理法や好みなのだということで勘弁してください💧食べ方ですが、煮付けたものを使う事が多いようで、そのままスプーンで口いっぱいも良し、酒の肴にチビチビも良し、ご飯のおかずに良しで、ヘボ飯などは秋のご馳走といえるでしょう。

ヘボ文化

先に書いたようにヘボ追いは、蜂を見失わないように目をこらし、常に上をみつつ走っている状態なので年輩になるほど危険なため、年々蜂追いをする人も減少しているそうです。中には女王蜂を越冬させるなど並々ならぬ努力を重ねる人もいるとか。それでも伝統を絶やすまいと地元高校生が研究をしたり、保存会ができたりと脈々と受け継がれています。危険と苦労の積み重ねがあってのヘボ文化。高級食材といわれる理由はここにあるのだと感じます。

特に隣市の県境近くの地区で11月に行われる「へぼ祭り」は、全国から多くの飼育家がその年自慢の自家製ハチの巣を持ち寄り、大きさや重さを競い合うコンテストが行われ、例年100個以上の参加があるとか。5~6㎏級の巣が多く、生きた蜂がブンブンと飛び回る中、完全防備で審査され、万が一に備え救護班も待機しての一大イベントとして有名です。(残念ながら今年2021年もコロナのため中止)現地での即売会でも1㎏9000円の値がつきますよ。
私の友人曰く、会場にきたなら大人気の「ヘボ五平餅」は食べるべき!!とのこと。味噌にヘボが混じっているそうです。(それでも私はごめんなさいなのですが💧)

今回は「ヘボ」についてご紹介しましたが、みなさんに伝わりましたか?興味のある方は一度食べてみてくださいね。東濃地区の道の駅、スーパー、サービスエリアなどでビン詰め状態で売ってますよ。

次回は師走にぴったりのあったか郷土料理をご紹介したいです。